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ねがい

第一章『青春の忘れ物』 第三話『昔みたいに』

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 美南は、赤く上気した自分の顔を映す翔斗の瞳を見つめた。美南よりも少しだけ明るいその瞳。彼は少しだけ緊張していたが、少し興奮しているのは美南と同じだった。
「あのね、翔ちゃん」
 その瞳を熱っぽく見上げながら、美南は翔斗に語り掛けた。彼女をどこか不安げに見返す翔斗。美南は、少し逡巡した。もう一度、翔斗の瞳を見つめる。そこには、不安に隠れてほんの少しの恐怖と、たっぷりの気遣いが含まれていることに彼女は気づいた。喜びでハイになっていた心を、少し鎮める。一瞬、冷静になって考えてみる。
 どうして、今だったの? 翔ちゃんはどうして今、告白してきてくれたの?
 長い間考えなくてもわかった。一体どうやったら落ち込んだ彼を励ませるだろう。そうして一生懸命悩んでいたのは、とっくに翔斗にはお見通しだったのだ。沈んだ表情で必死に考えていた。美南が翔斗のために心を擦り減らしている事が、幼馴染の翔斗にわからない筈もなかったのだ。だから、彼は今美南に告白した。どん底の状況で、大好きな彼女の気持ちを明るくできる最良の選択肢は、彼にとってそれ以外になかったのだ。
 それって、なんだかフェアじゃないよね。
 美南は翔斗に向かって小さく微笑むと、手に持っていたボールを掲げて見せた。
「ね、翔ちゃん。今からキャッチボールしない」
 翔斗は怪訝そうに眉を寄せた。
「いいでしょ、お願い」
 言いながら、既に美南は翔斗の元を離れてベンチの近くへ駆けていた。グローブを持ち出そうというのだろう。
「……美南?」
 翔斗はただでさえ落ち込んでいるのに、美南のために隠していた思いを打ち明けた。本当に励まされるべきは翔斗の方であるべきなのに。先に励まされてしまった事に、美南はマネージャーとしてのプライドを傷つけられた気でいた。勿論、告白に対する答えは迷うまでもなく決まっていた。しかし、ここでイエスと言ってはいけない気がしたのだ。翔斗は幼い頃から目指していた甲子園に届くことができなかった。ピッチャーで三年生。最も重い責任があるだろう。最後の最後で最高のピッチングができなかった。だから負けた。最高のパフォーマンスができなかったから、落ち込んでいた。落ち込んで当然だ。だが、もしも美南が今告白を受け入れれば、翔斗はもしかしたら、その瞬間立ち直ってしまうかもしれない。果たして、それでいいのだろうか。それはごまかしではないのか。もやもやと落ち込んだ気持ちを晴らさないまま単純明快な喜びを与えて、絶望から目を逸らさせる。それは、翔斗のためになるのだろうか。
 彼を本当の本当に慰められるのは、彼を傷つけた野球そのものだけだ。自分が例え今彼の気持ちを受け入れたとして、それではきっと中途半端なまま残ってしまうのだろう。翔斗が美南と喧嘩したとき。飼っていたペットが死んだとき。野球が原因でなかった時でさえ、いつも翔斗はボールを投げて投げて、投げまくって気持ちを落ち着けていた。彼が立ち直るときは、涙が枯れるまで泣くやり方ではない。両の手が真っ赤に晴れ上がるまでボールに想いを込めて、それで気持ちに踏ん切りをつけていたのだ。美南のすべきことは、いつも最後の仕上げだった。それが彼にとって一番いいのだと、彼女にはわかっていた。決着をつけさせるのだ。
「翔ちゃん、マウンド登って」
 ベンチから出てきた美南は、完全防備の姿だった。ヘルメットにキャッチャーマスク、胴当てに脛当て。翔斗はギョッとした顔で目を見開いた。
「美南、何やってんだよ」
「何って? キャッチボールだよ」
 美南は、特に運動音痴というわけではない。人並みにキャッチボールくらいできる。それがこの完全防備で固めているというのは、翔斗を馬鹿にしているか、もしくは彼に本気の速球を要求しているということだ。美南はこのような場面でふざけて翔斗をコケにするような少女ではない。ならば、その意図するところは。
「本気で投げてね、翔ちゃん」
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