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ねがい

第一章『青春の忘れ物』 第二話『告白』

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 口をつぐんで俯いた美南を目にして、翔斗も唇を噛んだ。翔斗には、彼女が何を考えているのか手に取るように分かっているから。美南は、不甲斐ない自分の姿を、見ていられなくなったのだ。励まそうとして思わず呼び止めて、でもそうした後になってから、こんな状態の自分に掛けられる言葉を探しあぐねてしまった。自分がこんな表情をしているばかりに。
 美南も苦しんでいる。沈痛な面持ちでじっと地面を見つめる彼女を見て、翔斗は痛感した。翔斗の夢は彼女の夢でもあった。甲子園に行くのは彼だけの目標ではなかった。こんなに早く、部活が終わりになるはずではなかった。翔斗も、美南も。
 翔斗が必死だったように、美南もまた、マネージャーとして必死だった。選手達が必死に足掻いた真夏の試合、彼女もまた、声を枯らして声援を飛ばしていた。寝ぼけ眼で翔斗が朝練に出た時、美南は既に登校して彼を迎えた。冬の夜も、心配になるほど遅くまで残って仕事をしていた彼女を、翔斗は知っている。
 辛いのは自分だけじゃない。美南も悔しくて堪らないのだろう。どんな時も自分を支え続けてくれた美南。自分を責めるだけでよい自分の、なんと気楽なことだろう。直接勝利に貢献できない彼女は、彼以上に辛い思いをしているに違いない。歯がゆい思いをしているに違いない。それなのに翔斗を心配して、気を使って、心をすり減らしている。
 彼もまた、そんな風に苦しむ美南を目にするのが耐えられなかった。小さい頃から十数年間、美南の悲しい顔も、悔しい顔も、いくつも、いくつも、全部見てきた。いつもこんな気分になった。自分が傷ついているその時より、彼女を傷つけたとき、彼女の傷付いた顔を見たときの方がずっと辛かった。この人の悲しみを壊したい。美南が翔斗に対してそう思ったように、翔斗も美南に対して思った。
 だが彼もまた、無力だった。今から彼女に勝利を届けることはできないのだから。甲子園への切符を渡してやることは出来ないのだから。だがその代わり、再び彼女を笑顔にするのは自分でありたいと思った。他の誰でもなく、自分が彼女を幸せにしたいと。それ以外にしてやれることはない。そして、それができなければ、情けない自分を一生許せそうになかった。
「美南」
 だから翔斗は、自分からその沈黙を破った。泣きそうな目をした美南が、ゆっくり顔を上げる。翔斗はゆっくりと美南の方へ近づいていった。開いた距離が、徐々に縮まる。さっき自分から背を向けた美南に、歩み寄る。近づくにつれて、涙に濡れる美南の表情が鮮明になっていった。そんな顔をさせたのが自分だと分かっているから、一歩進めるごとに胸がチクリと痛んだ。
 橙色の闇の中で、美南と自分だけが鮮明だった。美南の涙が、手元の白球にこびりついた泥を溶かしているのが見える。彼女の手の中で、自分達の、あのもう帰らない青春の日が、一瞬ごとに消えてゆく――――
「美南」
 ようやく、目の前に辿り着くと再び翔斗は彼女の名前を呼んだ。いつの間にか彼女の涙は止まっていた。橙色だった世界は、いつしか、より暗い、深い夜の時間に変わっていた。だが不思議と暗鬱とした雰囲気ではないように思える。目の前に大切な存在がいて、今、最後のけじめをつける。その決意で、先程まで自分の心を埋めていた嫌な想いは拭い去られていた。
「美南」
 翔斗が彼女の瞳をまっすぐに見つめると、美南もまた彼の瞳を見た。数秒見つめ合って、暫く振りに頬笑みを浮かべた翔斗が言った。
「好きだ」
 美南は、少し衝撃を受けたように目を見開いたあと、何か憑き物が落ちたように微笑んだ。もう涙を浮かべていない瞳は、彼の瞳を映してキラキラと輝いていた。満天の星を映す湖畔のように、美しかった。暫くの間、二人はそれ以上は何も言わずに微笑んで、見つめ合っていた。

***

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