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短編小説

短編小説『就職氷河期』

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 就職氷河期。何と恐ろしい言葉だろう。
 数年前までその言葉を、遠い世界の誰かにしか関係のないモノの様に、ヘラヘラと笑いながら眺めていた。自分が就職活動を始める頃には、もう少し良くなっているだろう、と。だが私の適当な予想はまんまと外れた。私が高校生であった頃よりももっと、それは厳しくなっている。街には職に溢れた若者達が昼夜を問わず集っている。彼らの瞳は皆澱んでいる。だのにそれでいて、鋭い光を放っているようだった。地べたに座った若者達は既に人生に絶望して、他人から奪うことで食いつないでいる。東京の治安は最悪だ。今のご時世、例えお天道様が燦々と照りつける真昼間であっても女性の一人歩きは自殺行為だ。え? オリンピック? あぁ、そんな話もあったわね。
 私が就職活動の為にあちこち移動する時も、必ず父親に付き添って貰っている。数年前まではそんなこと、子供を相当溺愛する人であってもなかなかしない行為であったのに今ではそれが普通だ。寧ろ一人で東京を歩こうものなら、親切な街ゆく人に交番へ連れて行かれる。そうでなければ、その先は死のみだ。
 私の周囲の人は比較的優秀な人材が多かったらしい。高校時代仲良くしていた友人達の朗報は何度も耳にしたし、大学で連んでいる友人にも、既にリクルートスーツを古着屋へ売ってしまった子がいる。就職氷河期なんて言葉、彼らは知らないのではないだろうか。だが私と彼らは別だった。私の状況は、街で屯す彼ら同様だ。両親や親戚からの視線が痛い。もう卒業も近いというのに、私は一つの内定も得ていない。全く手応えはなかった。
 実を言うと、真っ先に冬を越すのは自分だと思っていたのだ。高校時代から成績も優秀、特に英語に関しては秀でていたと思う。17歳の時にアメリカとカナダへ短期留学も果たした。教師からの期待も一心に背負っていたが、心地よかったし鼻が高かった。第一志望の大学へは苦なく入れたし、当時は人生がバラ色に見えたものだ。
 『英語なんてね、今のご時世みんな話せて当然なんだよ。だからね、そんなこと自慢げに話されてもねえ』
 それまでが幸せだった分、落ちていくのは地獄だった。高校時代、心の中でひっそりと見下していていた友人は真っ先に内定が決まった。大学で常に行動を共にしていた数人は私を除いて皆、既に社会人になることが約束されている。彼らと私に決定的な違いなどないはずなのに。
 いや、ある。私は彼らより優秀だ。強いて言うならそれであろう。高校の時も、私は学年で一番秀でていた。大学でも、みんなの憧れの的だった。だから、私が不幸になるなんて有り得ないのだ。彼らが私より幸福だなんて許されないのだ。だから私は、きっと今にこの窮地を抜け出すはずだ。そしてまたその先で優秀な成績を収める。私にはそれができる。私は優秀なのだから。だのに企業の奴らは、私がいかに優秀なのか見抜いていない。不幸な奴らだ。そうだ、彼らこそ不幸なのだ。私が不幸なのではない。私を選べば幸福になれるのに、その道に対して目を瞑っている世間の方が愚かなのだ。
 不意に、窓の外の若者と目が合った。金色に染めた髪と、対照的に伸び放題なヒゲ。衣服は薄汚れてぼろぼろだ。そんな奴が、私にニヤリと笑いかけた。
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