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こっくりさん

「こっくりさん」第六話「奥田勝子」

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「へぇ、なっつかしいなぁ」
 先程露わにしていた恐怖はどこへやら、悠二はすっかりこっくりさんの紙に興味を奪われた様子だった。真っ白いコピー用紙に描かれた赤い鳥居の絵、はいといいえの選択肢、そして50音。禍々しい様子など微塵もなかったが、何処か怪しい雰囲気を感じられた。幼い頃散々聞いた怪談話の影響だろうか、悠二は小気味よいほどの気持ちの昂ぶりと背徳感を感じていた。
「小学校以来だな、こっくりさんなんて」
 小学校低学年になると、誰からともなくこっくりさんが流行りだしたものだった。一昔前は教師によって厳重に禁止されていたようだったが、子供はやるなと言われればやりたくなる生き物。吉彦が小学生の頃には教師は完全に見て見ぬふりだった。そのお陰なのか、当時のこっくりさんブームはほんの数週間で無事に終わりを告げた。
「昨日ネットでオカルト見て、気になっちゃったんだぁ」
 そう言って夏江はいたずらっ子のような笑みを浮かべた。高校生といえど子供は子供。真新しいものに興味を持つのに年齢は関係なかった。
「まぁ、暇つぶしにはなるだろ」
 吉彦がポケットから銅銭を取り出すと、悠二も机を移動させ、四つで島を作った。
「いいじゃん、面白そう」
「お、二人共、ノリいいー」
 夏江も嬉々として、島になった机のうちの一つを陣取る。退屈な授業や補習よりも、彼らにとってはよっぽど刺激的だったのだ。三人が思い思いの席に着くと、吉彦がふと思い出したかのように背後を振り返った。吊られて悠二も後ろを向き、夏江までもが同じ方向に目をやった。そこには、先程の彼らの騒ぎに全く心を乱されず作業を続ける女子生徒がいた。浜田から仕事を押し付けられた委員長、奥田勝子だ。あまりにも静かに机に向かっているものだから、誰もが彼女の存在を忘れかけていた。
「奥田、お前もそんなところで一人でいないで一緒にやろうぜ」
 吉彦が気さくに声をかけると、勝子は肩を揺らして反応した。自分の名前が呼ばれるとは、まさか思ってもいなかったという様子だ。
「え」
 困惑した表情で3人を見やる彼女の視線には、微かに怯えが感じられた。その感情はこっくりさんという遊戯に向けられたものではなく、恐く悠二達への恐怖であろう。長い黒髪を真っ直ぐに下ろした彼女は、真面目な優等生で通っていた。素行も良く教師からは重宝されるが、生徒の中では地味すぎて埋没してしまう。派手で目立つ彼らとは本来なら目も合わせないはずの少女だった。浜田が去ってからも暫くの間、彼らの眼中になかったのはそれ故であろう。
「てゆーかぁ、奥田ちゃん超真面目だねっ」
 誰に話しかけるにも臆することがない夏江が勝子の元まで歩み寄り、彼女の手元を覗き込んだ。ホームルームの計画に学校文集の原稿、文化祭後の会計処理の書類まである。とても生徒に任せるべきではない仕事量だった。
「そんなこと、ないと思うけど」
 明るくハキハキと話す夏江とは対照的に、勝子は小さな声で謙遜した。ペンを握る小さな手は白く、儚げに見えた。
「へぇ、偉いな、奥田。沖野とは大違いだ」
 悠二が勝子を褒めつつ夏江を貶すと、彼女は唇を尖らせて悠二の足を蹴った。
「いってぇな、マジで奥田とは大違いだな、お前」
 悠二はパフォーマンスと間違えるほどに大袈裟に痛がった。夏江は彼にしかめっ面を向けた後、勝子に向き直って告げた。
「奥田ちゃん、こっち来て一緒にやろうよ」
「浜田にやらされたそんな仕事、放っておけよ」
 それに吉彦も加わって、二人で勧誘にかかる。彼らは勝子と違い、性格の違いをあまり問題にしていない様子だった。
「でも、こっくりさんって危ないと思うし」
 不安気に勝子が言うと、3人は笑い飛ばした。夏江は勝子の肩に手を遣って、何の根拠もない太鼓判を押す。
「大丈夫だよぉ」
「本当に……良くないよ」
 彼女が俯いてしまうと、吉彦は説得の言葉を並べ立てた。
「ただの迷信だよ。怖い怖いって思ってるから怖いんだ。子供騙しだよ」
「それにぃ、こっくりさんって願い事も叶えてくれちゃうらしいじゃんっ」
「それ初耳……マジかよ」
 嬉しそうに夏江が付け足すと、興味深そうに食いついたのは吉彦だった。悠二は疑い深そうに探りを入れる。
「作り話じゃないだろうな」
「違うからぁ。もう、ちょっとはあたしの言うこと信じろよぉ」
 夏江が不貞腐れても男子二人は相手にせず、再び勝子の説得にかかった。彼女は困惑しており、承諾する様子は全くないのに彼らは諦めない。勝子は、自分は彼らのように明るく振舞うこともできず、気の利いたことも言えないのに何故この様に執拗に誘われるのか理解できなかった。自分が加わっても場が白けるだけだ。だが彼女の思いとは裏腹に、悠二もわざわざ席を立って彼女の隣に付いた。前と後ろ固められて、いよいよ勝子は怯えた様子だ。
「なぁ奥田、みんなでやるんだしそんなに怖がることないだろう」
「赤信号みんなで渡れば怖くない、って奴だ」
 彼女が怖がっているのを微かに感じ、吉彦は優しい声色で誰もがよく知る標語を持ち出した。
「それは違うと思うけど……」
 どちらもよろしくない行為であることは共通している。勝子の反論を遮って、今度は夏江が言い募った。
「いいじゃん、せっかくクラスメイトになったんだよぉ。友達でしょ」
 友達、という単語に勝子は反応を示した。彼女は地味で口数が少ないことから、友人は多くない。夏江や悠二のような派手な輩は苦手だが、自分には無い明るさと前向きな考えを持っているとは思っていた。積極的に付き合いたいとは思わないが、少なからず憧れを抱いていた。そんな夏江から友達であると言われて、それが例え自分を誘うための口上であるとしても嬉しくない訳はない。
「うん……そうね、わかった。一緒にやる」
 勝子はとうとう、微かに決意を固めた表情で頷いた。夏江は歓声を上げ、吉彦は早くやろうとばかりに先ほどの席に舞い戻った。悠二もニッコリと呟く。
「決まりだな」
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